蕎麦との出会いを思い出す。
小生の最初の赴任地「東城」。
そこに、おばあさんの打つそば屋さん「加藤そば」があった。
まだ、20代前半だった小生に、
蕎麦を味わう感性はなかったが、
先輩に連れられていくと
いつもやさしく蕎麦を打ち、食べさせてくれた。
話好きな、やさしいおばあさんだった。
お店に入ると、「よう、きなさったなぁ」と
お店の奥の部屋にある掘りごたつに案内してくれ、
「久しぶりじゃなぁ」と30分ほど近況をお話し。
「では、そろそろ打たしていただきましょう」と
裏に蕎麦粉を取りに行き、それから打ち始める。
ギィーコォー、ギィーコォーと音がして、
つなぎ粉なしの十割蕎麦が登場するのは、
それからさらに1時間弱。
おばあさんの話口調もゆっくり、
静かで時もゆっくりと流れていくようだった。
お客の書き残した綴りを見ながら、
なすびの漬物をつまみに、ビールを飲みながら待った。
飲んだ帰りの遅い時間に行っても、
(おばあさんは、寝ていた時でも)
「お腹がすいとるんじゃろぅ、入いりんさい」
と布団から起きてくれ、それから打ってくれた。
そばが出てくる時間には、掘りごたつで寝ていたときも、
「できたよ、食べんさい」とやさしく起こしてくれ、
食べ終わるまで、付き合ってくれた。
すべてが思い出。
加藤のおばあさんは、
会いにいくには遠いところに行ったままです。
(2006/04 永眠)
写真は、「まっとうな温泉めぐり」ブログから転載させていただきました。
http://leonkun.web.fc2.com/onsensimaneokuizumoyokotasoba.htmlおばあさんの記事・写真を残していてくれて、本当に感謝いたします。